私たちはこの世に生まれ出たということの不思議さに、一瞬、戸惑うことがある。自らの出自や生い立ち、境遇、置かれている環境に、「なぜ、そうなったのだろう」と偶然の重なりと運命的な出来事に、ある種言い難い想いにとらわれることがある。生きていくなかで壁にぶつかり、苦しさややるせなさに見舞われる時、ふと生きていることへの疑問を抱くこともある。あるいはまた、宇宙の成り立ちや大自然の営みに触れ、今、人として生きて在ることの不思議さに「なぜ、ここにいるのだろう」と自問することがある。
この詩集は、そんな想いを明解なことばとイメージで描いている。いわば意識の底を流れる人間存在の不確かさを、具体的な事物や事象に置き換えながら作品化している。